脳内ポイズンベリー
面白い。コメディとして面白いし、内容的にも興味深い。別に脳内会議の存在をまじめに考えているわけではないけれど、その会議のメンバーの捉え方が面白い。そして、主人公いちこを最後の選択に導く会議の結論については妙に納得してしまう。
私なんかは自分の考えの構造を会議なんて考えると、理性と本能、感覚から感情、そして記憶というように並べてしまうと思う。ところがこの作品(もちろん原作も)では理性と記憶は良いとして、その他の会議のメンバーとしてポジティブとネガティブと衝動が入って来てしまう。
「へぇ〜! 女性ってそうなの?」
と、疑問に思いながらも、自分も時には怒りに任せて怒鳴ったりもするわけだから、構造というより現象的にはこの方がより近いのかもしれないと、なんだか納得してしまう。
で、この会議メンバーの掛け合いが面白い。そして面白い中にもドキッとするようなセリフも出てくる。ポジティブが
「・・・前向きに!」
と、言うとネガティブが
「あんたの前ってどっちよ!」
なんて、どっかのビジネス書がひっくり返るようなやり取りだ。つまりこの話、脳内会議のメンバーの中でもポジティブと衝動の捉え方がキモなのだ。すべての問題はこの二人の暴走ではじまる。自分を振り返ってみるとなんだか身につまされる。
十代の頃には「嫌いになったわけじゃないけれど・・・」「一緒にいたらダメになるから・・・」「好きだからこそ・・・」で、別れるなんてことが、なんだかまどろっこしくて訳のわからないことに思えた。だけど人生そろそろ振り返ったほうが長いという頃になるとそれらは月並みで臭いセリフに思えてしまう。でも、それはどうしてだろう?と問われると、それぞれ具体的な例は挙げられるとしても、それぞれを通してあるはずの論理はなにか、すぐには思い当たらない。実はこの物語はその疑問にしっかりと答えてくれる。これが、最初に言った会議の結論なのだけれど、これには思わず、
「ナルホド!」
と、感心してしまった。
いっとき、笑って日常を忘れてしまうためにこの作品を見るのも良いけれど、それだけではもったいないような、ちょっと味のある作品である。