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映画そもそも日記

映画のそもそも〜ってなんだろう?をベースにした日記

ナイスガイズ!

ラストの皮肉に思わずニヤリ 

 息苦しく、不安な今に'70の懐かしい雰囲気、痛快なバディ・ムービーを楽しみたければオススメ。だけど、それだけじゃない。

この作品、いつ企画されたのだろうか?まさか、2016年中に企画の立ち上げから公開まで進めたのか?そんなことはないだろうけれど、どうしても今、「言ってやりたい!」事があって、そいつにピッタリの企画があったから、その中に「言ってやりたい!」ことを仕込んでしまったというところなのだろうか。とにかく、このご時世にピッタリの作品なのだ。そして、それを聞いた観客は、特にアメリカの観客は賛否に分かれて立ち上がり、日本の観客は思わずニヤリとせずにはいられないだろう。 

 舞台は1977年のロサンゼルスらしい。当時は日米貿易摩擦が大問題となっていた頃。この物語の背景もアメリカ製造業界の屋台骨を支える自動車産業、いわゆるビッグスリーGM・フォード・クライスラー)の苦境が下敷きとなっている。このあと日米貿易摩擦は自動車紛争へと発展していく。 

参考:https://gazoo.com/car/history/Pages/car_history_040.aspx 

ここを押さえておかないと、単なる面白おかしいバディ・ムービーと見間違えてしまう。いや、もともとはそういう企画だったのかもしれないし、そういう作品としても十二分に楽しいのだが、それだけではない。物語は自動車産業界の政府との癒着を告発するために創られた一本のポルノ映画にまつわる連続殺人事件へと発展していくのだが、そこに彼らは「今、どうしても言ってやりたい!」ことをたった一言だけ、けれど全編を巧妙に下敷きとした強烈な皮肉として仕込んだのだ。実はこの作品自体が物語に出て来るポルノ映画と同様の役割を果たしているのだ。 

 さて、その一言の皮肉とは、これが面白い。それはラストシーンのライアン・ゴズリング演じるホランド・マーチがラッセル・クロウ演じるジャクソン・ヒーリーに対してのセリフなのだが。 

 「どうせ、5年も経てば・・・・・」 

 「・・・・・」の部分は観てのお楽しみなのだが、そこがわかればそのセリフは決してヒーリーに対してのセリフではなく、今見ている観客に対してのセリフであり、あの有名な金色とさかの人物へのメッセージだということがはっきりする。当時の自動車技術を考えても、自分の車の標準装備についても知らないようなマーチのキャラクターを考えても物語世界では到底出てこないセリフのはずだ。普通このような演出は観客を物語世界から現実世界へと引き戻してしまい、興ざめさせてしまうのだが、このセリフをラストの絶好のタイミングに持ってくる上手さに脱帽なのだ。 

 私はこのシーンを何にも増して痛快に思った。これをやってしまうアメリカの映画人のパワフルさと勇気に拍手なのである。背景にはもしかしたら映画界の既得権益者とのつながりがあるとしてもである。 一見の価値あり。