映画そもそも日記

映画のそもそも〜ってなんだろう?をベースにした日記

パッセンジャー

息苦しい 

 閉塞感と孤独を表現することが目的のはずだから、息苦しさを感じたなら作者にとって成功なのかもしれない。確かに、主人公たちが宇宙服を着て船外に出る場面は世界の縁を覗き込むような底の知れない恐怖と疎外感による孤独とを感じる。だから、そこで人生を終えなければならない者の恐怖も際立ってくる。しかし、私にはそれら作品内容とはまた別の閉塞感、映画表現における閉塞感のようなものを感じたのである。映像的な表現の限界と物語の設定の基本的条件による広がりのなさが、宇宙という無限の広がりを持つ世界での物語のはずなのに表現の内容は人の心の奥底へと狭く深く沈み込んでいく。ラストシーンでの映像が主人公たちの人生が決して孤独ばかりではなかったと、少しの救いを表現しているのだが、それでも少し考えれば、それは果てしない孤独の中のほんの少しの慰めと思えてくる。ジェニファー・ローレンスの演技はそのことを理解し、逃げることの出来ない恐怖と苛立ちをよく表現している。この作品は身動きの取れない高所の恐怖と逃れること出来ない閉所の恐怖をともに持っているのだ。 

 この物語は無限の宇宙を舞台にした壮大な物語ではない。本質は決して逃げ出すことの出来ない迷路に嵌ってしまった男と女の誇りと救いの物語である。悪い映画ではないのだけれど、鑑賞後も解決のつかない息苦しさの残る作品である。