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映画そもそも日記

映画のそもそも〜ってなんだろう?をベースにした日記

追憶

昭和の美 

 この作品は鑑賞者を選ぶだろう。物語もそこに登場する人物の描き方もそれほど深いものではなく、今観るとお涙頂戴と映るものかもしれない。だが、この作品はそのように読むよりも心情や背景を観て感じるほうが良いだろう。しかし、そうして観ることで、この作品を「美しい」と思えるのは昭和という時代に青春を過ごした者たちだけかもしれないのだ。 

 私はこの条件に当てはまるけれども、若大将にも寅さんにもほとんど興味がない少年時代を過ごした。劇場映画は時々親が連れて行ってくれた東映まんがまつりや、ゴジラガメラの印象が強い。しかし、当時頻繁にテレビで放映されていたフランス映画やチャプリンヒッチコック作品などはよく観ていたし、私が映画に心を奪われたと思えるのは「2001年宇宙の旅」だった。そして青春時代はアメリカン・ニューシネマとともに過ごしたのだ。だがそんな私でも好みの裏に私を育ててくれた時代の雰囲気が染み付いているものだ。私が観たのは全て、昭和の日本に育った目を通したフランス映画であり、アメリカン・ニューシネマなのだ。だから、この作品を観て「クサイ」とか「情緒的にすぎる」と言いながら、密かに劇場の暗がりで目をうるませてしまう。本当にカットの一つ一つが絵になっている。写真的な美しさではなく、映画的な動的な美しさだ。特にタイトルバックの風景とラストシーンからエンドクレジットへの転換は映像だけで泣けてしまう。 

 この作品の売りはやはり監督、降旗康男と撮影、木村大作のコンビということなのだろう。だから、そこを楽しめる方は存分に昭和の美に泣いて欲しい。